暮らしのなかで使ってこそ伝統は文化になる

 
2018.5.14

和紙作家、堀木エリ子さんがプロデュースした
移ろいを感じる“変容する家”とは―

ユネスコにより無形文化遺産に登録された「和紙(日本の手すき和紙技術)」。しかし、日本を代表する和紙作家の堀木エリ子さんは「無形文化遺産に登録されたということは、ある意味では絶滅危惧種として認められたようなものです。和紙という伝統技術を残していくための努力をしないと伝統が滅んでしまう」と警鐘を鳴らします。

コラム  暮らしのなかで使ってこそ伝統は文化になる

「無形文化遺産に登録されたということは、ある意味では絶滅危惧種として認められたようなものです」と和紙の未来に警鐘を鳴らす堀木エリ子さん。

堀木さんは、「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマに、2700×2100㎜を基本サイズとしたオリジナル和紙を制作しており、「東京ミッドタウンガレリア」、「パシフィコ横浜」、「在日フランス大使館大使公邸」、「成田国際空港第一ターミナル到着ロビー」などのアートワークを手掛けています。

京都の堀木さんの工房では伝統と革新を融合した手法で和紙を作成しており、独自の加工技術などを駆使しながら「燃える、汚れる、破れる、退色する、精度がない」といった和紙の弱点を補いながら、現代の建築空間のなかでの和紙の可能性を広げようとしています。まさに、を引き継ぎながら、革新によって“絶滅危惧種”となり得る和紙の進化を促そうとしているのです。

その堀木さんがアキュラホームとコラボレーションし、モデルハウスをプロデュースしました。アキュラホームの創業40周年事業として取り組んだもので、「変容する家~移ろう空間~」というテーマを同社の神戸展示場(ABCハウジングコレクション神戸東)内で具体化させています。

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堀木エリ子さんがプロデュースしたアキュラホームのモデルハウス。テーマは「変容する家~移ろう空間~」。

このモデルハウスには、随所に堀木さんが作成した和紙が使われており、例えば1階のリビングダイニングの壁には和紙を用いた「光壁」がモダンな住空間に“和”のアクセントをもたらしています。この「光壁」は、和紙の後ろ側に照明が組み込まれており、夜になり照明を点灯すると壁全体から柔らかな光を発するそうです。これによって、昼間とは全く異なる雰囲気を演出します。まさに移ろいを感じる空間になっているのです。

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リビングの壁を彩る和紙を用いた「光壁」。夜になると和紙ならではの柔らかな光でリビングを包み込む。

また、このモデルハウスでは日本の伝統的な家屋が備えていた「変容」という機能も再現しています。日本の伝統的な家屋では、襖や障子などの建具を上手く活用しながら、使い方や家族構成の変化、さらには季節などに応じて間取りを変容させながら暮らしていました。この考え方を現代に蘇らせるために、和紙を用いた可動式の建具を2階に設置、現代の暮らしにマッチする“変容する家”を形にしました。

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2階の空間を間仕切っている和紙を使った建具は可動式になっており、家族構成の変化などに応じて空間を変容させることができます。

「住まいのハード面での性能や品質も当然ながら大事ですが、今後は豊かさを感じるような感性に訴える空間を創っていくことも大切ではないでしょうか。日本の伝統文化によって豊かな空間を創りだし、世界に誇れるような住宅を提供していきたい」とはアキュラホーム宮沢俊哉社長の言葉。
また、堀木さんは「伝統技術とは暮らしのなかで使われてこそ文化になっていくのではないでしょうか。その意味では住宅の中で和紙をどう使っていくかが大事であり、今回は非常に良い機会をいただきました」と語っています。

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アキュラホームの宮沢社長(左)と堀木さん(右)

暮らしのなかで使われてこそ文化になる―。どうしても特別なもののような気がしてしまう伝統工芸品ですが、上手く現代の暮らしに調和させながら、もっと住まいの中に取り入れていくことで、新しい住まいの価値が誕生するのかもしれません。

*「変容する家~移ろう空間~」の詳細はコチラ