住まいや住生活にかかわる幅広い業種の企業が集まり、関連行政機関や団体、学識経験者、メディアなどの協力を得て、さまざまな視点から研究活動に取り組んでいます。

コロナ禍で浮き彫りになる子育て不安と地域コミュニティの関係とは

江崎グリコが実施した「コロナ禍における子育てに関するパパママ意識調査」によると、コロナ禍の子育てにおいて孤独感や心細さを感じているお母さんが全体の約7割にも達しています。

「地域のコミュニティに参加できない」、「ほかの子育て中のお母さんと交流できない」など、外の世界との接触機会が減ったことがその大きな理由になっているようです。

逆の見方をすると、地域のコミュニティがお母さんの子育て不安を解消するうえで重要な役割を担っており、コロナ禍でそのつながりが分断されたことで不安が増大しているとも言えそうです。

厚生労働省が公表した令和2年度の児童相談所による児童虐待相談対応件数は20万5029件で、前年度より1万1249件(5.8%)増え、過去最多を更新しました。こうした児童虐待の増加につながる要因のひとつが、お母さんが孤立化し子育てへの不安を解消できないことにあると言われています。

国や自治体では、「地域子育て支援拠点」として、子どもを持つ親子の交流の促進や育児相談などを行う「子育てひろば」というものを全国で整備しようとしていますが、問題はこうした場所にさえ行くことができずに孤立化しているお母さん達なのかもしれません。

第15回キッズデザイン賞でキッズデザイン協議会会長賞を受賞した旭化成ホームズの「母力(ぼりき)」は子育て共感賃貸住宅。入居者同士が子育ての喜びや苦労を共感し、助け合えるコミュニティを形成し、子どもを見守り合いはぐくむ環境の整備を目指しています。

入居契約時に面談を実施し、住民憲章「子育てクレド」を説明した上で趣旨に賛同してもらうことが入居の条件となっており、入居時の顔合わせイベントや夏祭り、防災イベントなど、入居者同士のコミュニティが醸成されるような仕組みを導入しています。

旭化成ホームズの子育て共感賃貸住宅「母力」では、子育て不安を解消するコミュニティを醸成する仕掛けが数多く盛り込まれている

お母さんが集える「母力の庭」やリビングと中庭が緩やかにつながる住戸配置などによって、日常のコミュニケーションが自然と生まれる環境も整備しています。

住まいはお母さん達を笑顔にできるのか―。ハードとソフト両面から、このテーマに取り組む母力ですが、コロナ禍によって重要性が浮き彫りになった子育て不安を解消する地域コミュニティの誕生を促す住まいと暮らしを具現化しようとしています。