訪日観光客の宿泊施設不足の解消へ
過去最高の訪日外国人観光客を更新し続ける中で、注目されているのが「民泊サービス」。一方で、治安・衛生・近隣トラブル・管理責任など懸念される課題も。
厚労省と観光庁の有識者会議では、民泊サービスの新ルール(制度設計案)を6月にとりまとめる予定で、住宅を活用した適正な宿泊ビジネスが始まりそうです。
日本政府観光局が発表した昨年1年間(平成27年1~12月)の訪日外国人観光客の人数は1,974万人で過去最高。5年前の平成22年の861万人の2倍以上となっています。政府の「明日を支える観光ビジョン」では、東京オリンピック時の2020年に訪日外国人旅客数を4,000万人、消費額8兆円への目標を掲げています。なお、今年4 月は前年同月比18.0%増の208 万1,800人。3 月(200万9,500人)に続いて2 カ月連続で200 万人を超え、過去最高を更新中です。
こうした中、宿泊施設の1つとして挙がるのが「民泊サービス」。使っていない自宅(戸建て住宅、共同住宅、貸家など)の住宅全部または一部(部屋)を活用し宿泊場所として貸し出すもの。家主にとっては宿泊料金、外国人にとってはポータルサイト(マッチングサイト)で簡単に探せ、低額で利用できるのがメリットです。
しかし、話題を集める一方で懸念される課題も明らかになってきました。宿泊者が通路で騒いだり、ごみ出しルールやマンション管理規約の無視など、地域住民などとのトラブルが起きています。
京都市がまとめた民泊実態調査によると、民泊サイトに掲載され市内にある民泊施設2,702件のうち「戸建住宅」935件に対し、「集合住宅」は1,677件で全体の3分の2。また、所在地の特定ができた施設のうち旅館業が無許可と思われるのは全体の約7割と推測しています。
1泊当たり料金は6,000~1万2,000円が多く、2.4万円以上も309件あり、うち212件は「戸建て一棟貸し」でした。
民泊は無許可営業の施設が多く、建物の構造や消防設備、衛生設備などで法令に定められた基準を満たしていない施設が多いと思われます。
厚労省と観光庁の有識者会議「民泊サービスのあり方に関する検討会」は、このほど「民泊サービスの制度設計案」を提示し、ルールづくりを検討しています。
民泊サービスは、4月からの旅館業法改正で簡易宿所として営業できるようになりましたが、あくまでも旅館業法上での運用。制度案では、民泊サービスを〝住宅を活用した宿泊の提供〟と位置づけ、住宅を1日単位で貸し出すもので、「一定要件」の範囲内で有償かつ反復継続するものと定義しています。
具体的には、基本的な考え方として「家主居住型」「家主不在型」に区分し、住宅提供者・管理者・仲介業者に対する適切な規制を課し、適正な管理や安全面・衛生面を確保。
また、既存の旅館・ホテルと法律上で異なる取り扱いとするため、例えば、日数制限や宿泊人数制限、延床面積など合理的な基準を設定し、これまで旅館、ホテルなどの設置ができなかった住居専用地域でも実施が可能。ただし、地域の実情に応じて市町村条例で禁止できることを盛り込みました。
検討会は6月中に最終報告書をとりまとめ、それを踏まえて必要な法整備に取り組み、民泊新法で急増する観光客と民泊ビジネスに対応していく予定です。