1月1日の相続税制の改正により課税対象者が増えているのに加えて、7月1日に発表された平成28年の路線価は8年ぶりにプラスに転換。
上昇幅が大きい都市部では、相続や贈与に関する対象や税額アップで悩む人が多くなりそうです。
国税庁は、相続税や贈与税などの算定基準となる平成28年の路線価(1月1日現在)を公表しましたが、標準宅地の全国平均の変動率は前年比0.2%の上昇となりリーマン・ショック前の平成20年以来8年ぶりプラス。首都圏1都3県や、大阪、愛知など10都府県が前年に引き続き上昇したのに加え、今回は、北海道、福岡、広島、熊本の4道県が上昇に転じています。
全国平均の変動率の推移をみると、リーマン・ショック前の平成20年には10.0%のプラスだったのが、翌年は5.5%ものマイナス。下降幅は22年4.4%、23年3.1%、24年2.8%、25年1.8%。さらに、26年には0.7%、27年0.4%と徐々に縮小。今回は上昇に転じました。
3大都市圏を中心に14都道府県で上昇し、前回より4道県の増加。とくに、3年連続で全国1位の上昇率だった宮城県を抜いて東京都が2.9%でトップとなりました。
訪日外国人旅行客の増加を見込んだホテル・商業施設の需要増や、オフィスビル需要も底堅いほか、東京オリンピック開催を控え複合施設の再開発も進んでいるのが要因です。
東日本大震災の復興需要が続く宮城県は2.5%、福島県も2.3%と前年と同じ上昇率。両県とも沿岸部からの高台への移住者の住宅需要の高まりや、避難指示区域外へ移住する動きが続いているようです。
自動車関連の業績が好調の愛知県も1.5%プラス(前年1.0%)で、さらに、外国人スキー客でにぎわうリゾート地のある北海道、金融緩和で潤沢になった資金が都心部を中心に不動産投資に回った福岡県(0.8%)や広島県(0.5%)、中国人観光客が多いことで知られる商店街のある大阪府(1.0%)や、観光文化都市の京都府(0.8%)、観光リゾート地の沖縄県(1.7%)―などで上昇幅が大きくなっています。
逆に、神奈川県はプラス0.5%(前年0.6%)となったものの上昇幅は縮小したほか、三重県(1.8%マイナス)や滋賀県(0.2%マイナス)は下降幅が拡大しました。
路線価が算定基準となる相続税は今年1月1日に制度が改正され、基礎控除の縮小により課税対象者が増える見込み。さらに今回の路線価が上がった大都市圏などで対象者が増えそうです。