住まいや住生活にかかわる幅広い業種の企業が集まり、関連行政機関や団体、学識経験者、メディアなどの協力を得て、さまざまな視点から研究活動に取り組んでいます。

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ライフステージにあわせて7軒を住み替え これからの暮らしと住まいのいい関係を語る

創樹社が主宰する住まい価値総合研究所は、2023年8月24日、第2回これからの暮らしと住まいの価値を考える会「ライフステージにあわせて7軒を住み替えた建築デザイナーが語る暮らしと住まいのいい関係」を開催した。

これからの暮らしと住まいの価値を考える会とは、住まい価値総合研究所が企業の暮らし系シンクタンクや、商品開発、企画、マーケティングといった部門の担当者の情報交換や、人脈づくりの場として立ち上げたプログラム。今回は、建築デザイナーの井手しのぶさんをゲストに招き、トークスタイルで行った。

人生1度の大きな買い物とも言われる住宅。人生100年を、どう過ごすか、また支える住まいはどう変わっていくのか。井手さんの住み替え変遷などを聞きながら、これからの暮らしと住まいづくりについて考えていこうとの趣旨だ。

イベントの冒頭では、住まい価値総合研究所が実施した「住み替え意識調査」結果を紹介。今の住宅に住み続けたいとの意向は6割と強いものの、年代別の住み替え意向をみると30代は54%と過半数を超えており、今後住み替えが活性化していく可能性も指摘した。

家を楽しみながら暮らしてほしい

井手さんに7軒の住まいの変遷を語ってもらった。1軒目は結婚後、「家賃がもったいない」とお母さまが頭金を出資してくれて購入した家。2軒目はお子さんの学校に近い家を。3軒目の家は1階を自社事務所に2階を自宅にした併用住宅で、井手さんにとっては無垢材、珪藻土、自然素材を使った思い通りの家。当時はまだ自然素材を使った家が珍しく、この家を観た人から口コミで建設の依頼を受けるようになったという。そして4軒目は別荘としての箱根の家、5軒目はカフェにあこがれて緑の木陰のある家に。6軒目は「海の一列目に住みたい」と海が見える家をつくった。

「気に入らない家に住んでいるのがいやだった」と語り、その時々の自分の暮らしにフィットする住まいに住み替えてきた井手さん。住む家に愛情はかけるが5年ぐらいすると飽きてきてしまうのだという。手入れされてきた家は家具付きで販売することもあって引越しは楽だし、住み替えのたびに高く売れるので、次の住まいへの資金に充てることができたのだそう。7軒目の家はローンを組むことなくキャッシュで建設。鎌倉の斜面に建つコンパクトな平屋だ。

「シニアになったら大きな家や広い庭は手入れが大変。50代のうちから家を小さく減築したりリフォームしたり、住み替えも考えておいたほうがいい」と話す。

これからの暮らしと住まいの関係について、「若い人の住まいに対する意識は高い。自分にぴったりくる空間を探そうという人は増えてくるのではないか。大体7~8年で生活パターンは変わっていくのでそれにあわせて住み替えてもいいのでは。人生100年、家を楽しみながら暮らしてほしい」。

暮らしの風景  ライフステージにあわせて7軒を住み替え これからの暮らしと住まいのいい関係を語る
「長い時間を過ごす家にこそお金をかけてもいいのでは」と井手さん