2025年には団塊世代が後期高齢者となり高齢化はより進展することが予想されるなか、住まいと街のあり方も問われていると言えます。今年度の「厚生労働白書」では、人口高齢化を乗り越える社会モデルを考えると題して、今後の社会モデルとなる先進事例を多数紹介しています。その中から、いくつかをご紹介します。
「ICTを活用した医療介護連携~宮城県石巻市の場合」
全国各地で行われているICTを活用した医療介護連携のひとつとして宮城県石巻市の取り組みを紹介しています。
東日本大震災後に、医療法人社団鉄祐会の武藤理事長が「被災地にこそ在宅医療が必要」と考え石巻に「祐ホームクリニック石巻」を立ち上げたことが契機となっています。翌年から在宅診療所、訪問薬局、訪問看護ステーション、介護事業所、高齢者施設がクラウドでアクセスできるシステムの構築を開始しました。
システムは①訪問記録の共有②メッセージ共有③スケジュール共有を3本柱に、
情報共有を患者本人や家族も共有できるなど不断の見直しが図られています。
導入当初10事業所だった連携数も現在70事業者が参加し2014年からは石巻市医師会の事業となるなどその輪が広がっています。
「ごちゃまぜ!?」~多世代の共生に向けた佛子園の取り組む~
石川県を中心に事業を展開する社会福祉法人佛子園は日本版CCRCのモデルのひとつ「シェア金沢」を運営しています。
シェア金沢は高齢者デイサービス、サービス付き高齢者住宅に加え、同じ敷地に障害者の就労支援サービスと入所施設、天然温泉やレストラン、店舗、学生向け住宅もあるのです。高齢者や障害者が社会参加でき、地域住民や若者とも交流できる、人と建物を「ごちゃまぜ」にした取り組みです。
地域とのつながりを作り、福祉を「特別」なものから、「日常」のものへと変えることが狙い。いろんな人やものが「ごちゃまぜ」になることで、人がつながってまた人も集まる。活気と仕事が生まれ、高齢者や障害者にも活躍できる場所が新たに生み出されています。これからの社会モデルとしてのひとつとして注目されています。
イマドキの長屋~鹿児島市NAGAYA TOWER~
多世代交流型の賃貸住宅として参考になるのがNAGAYA TOWERです。
6階建て35戸で黄色い外壁とV字型の建物には中庭もあり、2階にはみんなのりびんぐ・台所(138平方㍍)、3階には空中庭園、4階、5階には岩風呂があります。
住戸タイプはワンルームから2LDKだが、シャワーだけの部屋が半数以上、
バルコニーも広めにとり、隣の部屋との隔壁板がありません。これも交流を促す仕組みのひとつなのです。
共同生活の調整役には事務局の3名があたり、日常生活から医療・介護の相談、住民と地域との交流イベント企画など行っています。
入居者は3歳から95歳まで、単身者、家族、高齢者など多世代がよい距離感で住める「場」となっています。