子育てに配慮した家づくり、周辺環境づくりのポイント
創樹社が主宰する住まい価値総合研究所は2024年3月21日に第89回スマカチ・シンポジオ「好事例から学ぶ 子育てにやさしい住まいと環境」を開催した。
昨今、国や自治体が支援策を通じて子育て世帯向けの住宅供給を加速させようとする一方で、子どもの家庭内事故防止や子育て世帯同士のコミュニティ形成促進など、子どもや子育て家族の目線に立った住まいづくりをサポートする動きも出てきている。そうした中、子育て家族のためのよりよい住まいづくりにいち早く着目したのがミキハウス子育て総研。2006年に民間初の認定事業「子育てにやさしい住まいと環境」をスタートして以来、第三者機関として子どもや子育て家族が快適かつ安心・安全に暮らすことのできる住まいを評価・認定している。今回は同社の藤田洋社長を講師に招き、事業の現況とこれまでの代表的な評価認定事例をご紹介いただきながら、子育てに配慮した家づくり、周辺環境づくりのポイントを聞いた。
認定実績は累計4万7000戸
「子育てにやさしい住まいと環境」では、新築分譲マンション、分譲戸建住宅、賃貸マンション、注文住宅・モデルハウス、中古・リフォームマンションについて、住宅・マーケティングの専門家と先輩ママの生の声をもとに体系化して評価基準項目を設定。専門の認定士がそれぞれの物件について「住まい」そのものや「周辺環境」などについて認定評価作業を行い、一定水準を充たした物件を子育て支援優良住宅として認定する。子育て層にとって一次取得の際の目安となるものだ。「住宅業界の建築・企画設計の指針となり、女性やママ目線の声が住宅業界に届くように」(藤田氏)との思いでスタートした同認定事業は、開始以来の累計で600物件、4万7000戸の認定実績がある(2024年2月現在)。認定基準の項目をまとめた解説冊子を広く開示することで、子育て支援優良住宅の普及啓発に大きく寄与した認定事業といっても過言ではない。
認定事業の概要として、家庭内で事故を起こさないための配慮やママ・パパのストレス軽減、子どもの自立促進、親子のコミュニケーションを育むなど、子どもの年代別に望ましい住まいのポイントを解説。例えば、子どもが幼少期(0~6歳)であれば、調理スペースが子どもの通り道にならないよう、冷蔵庫をキッチンの入口付近に設置する、窓からの転落事故を防ぐため、子ども部屋へのベランダ設置が求められる―などと紹介した。
また、これまでの認定物件の中から、共用部に子どもの年代別のキッズスペースを設けた分譲マンション、子育て世代の定住促進を目的に共用部に学習ルームを設置するなど子育てにやさしい室内外の仕様・設備を備えた公営住宅などの好事例を紹介。さらに「子育てにやさしい=アクティブシニアにもやさしい」(藤田氏)という観点から取り組む「子育て・シニア共生住宅」認定事例や子育てファミリーの日常に即したスマートホームの認定事例、中古マンションリノベ再販の認定事例も説明した。
藤田氏は「この20年で若い世代のライフスタイルが多様化し、同棲から妊娠、入籍、出産と所帯を持つ順番も大きく変わる中、子育てを意識した住み替えは今後勢いを増すだろう」と示唆した。