創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ)は2024年5月30日に第91回スマカチ・シンポジオ「子育て世帯の住宅取得事情~最新のデータに見る顕在・潜在ニーズ」を開催した。
2024年度のスマカチは、「住宅と子育ての関係を考える」を共通テーマに、全3回の予定で「スマカチ研究会」と銘打った勉強会を企画。その第1回目として「子育て世帯の住宅取得マーケティング」に焦点を当てた。子育て世代に向けた各種マーケティング調査など、子育て支援に関する事業を展開するコズレ子育てマーケティング研究所の飯野純彦所長を講師に迎え、同研究所がこれまでに実施した各種市場調査から読み取れる子育て世代の消費行動の傾向や住宅・住まいに関する市場調査結果を踏まえて、子育て世帯の住宅取得事情・ニーズを探った。
子育て市場の特徴と価値観の変化
飯野氏はまず、子育て世帯にアプローチする際に押さえておくべき市場の特徴を説明。厚生労働省が発表した2023年の出生数は1899年の統計開始以来、過去最少の72万9000人となり、民間調査機関の調べでは出生率も1.21と過去最低を更新する見込み。婚姻数の減少や価値観の変化、経済情勢を不安視する若者が増えていることなどがその背景にあり、少子化に歯止めがかからない状況だが、矢野経済研究所の調査では、2016年以降、乳幼児(0~2歳)向けを中心にベビー関連のサービス・商品の市場は微増しているという。「子どもの数自体は減っているものの、保育・教育施設向けの業務支援ツールや、子どもの見守りに関わるビジネスが特に伸びている」と示唆する。
また、コロナ禍以降、男女ともに家事・育児時間が増加していること、在宅で働く子育てママの意識として、「家で家族と過ごす時間が増えた分、一人の時間も大切にしたい」とのニーズが高まっていることなどを調査データを用いて説明。これに伴い、家事の効率化を図り、掃除のしやすい家にする―など、住まいの間取りや仕様も変化してきていると述べた。
戸建て購入のタイミングは「出産後」が多い
同研究所は、2024年5月に第一子が「妊娠中もしくは2歳以下」の全国の女性を対象にした「住まい」調査を実施した(有効回答者数1594名)。現在の住居は民間の賃貸マンション・アパート、貸家が5割を占めたものの、持ち家も戸建て、集合住宅を合わせて3割強存在。「妊娠中」と「0~2歳」に分類して持ち家(戸建て)と賃貸の割合を比較したところ、前者の戸建てが約22%で賃貸が約56%、後者の戸建てが約36%で賃貸が約45%となり、飯野氏は「出産後に戸建てを購入する傾向が読み取れ、妊娠、出産は戸建てメーカーにとって大きなチャンスと言える」と述べた。
また、妊娠中の女性の約3割が3年以内の住み替えを検討しており、住み替えを検討する理由として、特に「現在の住まいに対する不満」の回答割合が出産後に約2倍に増えていることから、「出産後の女性に対しては家の不満解消に向けたメッセージを発信すると効果があるのでは」と示唆した。さらに、住み替え後「一生涯住み続けられる家を希望」との回答が半数を占めたほか、4人に一人が注文・フルオーダーで新築戸建ての購入を検討していることも分かった。