創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ)は2024年7月23日に「URまちとくらしのミュージアム見学会」を開催した。
東京都北区のヌーヴェル赤羽台保存地区に昨年誕生した同ミュージアムは、都市の暮らしの歴史を学び、未来を体験できる情報発信施設としてUR都市機構が建設した。
復元された名作団地の数々
昭和の暮らしを追体験
同ミュージアムは、スターハウスなど保存住宅4棟に展示施設「ミュージアム棟」を加えた計5棟、さらにワークショップなども開催できる屋外空間で構成されている。見所の一つが名作団地と言われる数多くの復元住戸が展示されていること。
まず「同潤会代官山アパート」。1923年に発生した関東大震災の住宅復興のために設立された財団法人同潤会が建設した我が国初期の本格的な鉄筋コンクリート造の集合住宅だ。今では現存する建物を見ることができない貴重な復元住戸では、コンパクトな間取りに据え置きベッドや収納も設けられた当時の暮らしを体験できる。別のコーナーでは共同の食堂で実際に使われていたステンドガラスやレリーフといったインテリアも見ることができる。
また「蓮根団地」の復元住戸では、日本住宅公団(現UR都市機構)初期の代名詞となった2DKの代表的な住戸が復元されている。ダイニングでのイス座での食事を促すために家具も添え付けだった。高度経済成長期に憧れとなった団地暮らしの一端を追体験。
さらに建築家・前川國男の設計による公団初期の高層集合住宅「晴海高層アパート」では、垂直に3層、水平に2戸の計6ユニットを1パッケージとしたスキップ形式が採用されたほか、室内デザインにもこだわりが随所に見受けられ、いま見ても古さを感じさせないほど。
専用庭を設けた長屋建ての低層集合住宅「多摩平団地テラス」など、多種多様な集合住宅が復元されている。
このほかにも、まちづくりの変遷を体感できる「URシアター」や、安全で快適な暮らしを支えてきた住宅部品を壁一面に展示した「団地はじめてモノ語り」、さらに団地全体を俯瞰した模型や、団地の募集時のパンフレットや広告などをデータベース化したアーカイブコーナーなど実際に団地に住んでいた人達には懐かしかったのではないだろうか。
復元された団地の数々を見ていると、震災、戦争、好景気と大変化が起こってきた日本の歴史と、そこに暮らしてきた人たちの息遣いとともに、その時々で新しい社会のあり方、暮らしのあり方を見つめ新技術の導入や、住宅部品の開発、ライフスタイル提案など新たな住まいやまちづくりに思考錯誤しながら関わってきた多くの業界人の熱量も伝わってくるよう。過去を追体験しながら未来に向けて見失ってはいけないものに気づかせてくれるような機会となったのではないだろうか。