住まいや住生活にかかわる幅広い業種の企業が集まり、関連行政機関や団体、学識経験者、メディアなどの協力を得て、さまざまな視点から研究活動に取り組んでいます。

経済産業省が考える 脱炭素社会の実現に向けたこれからの住宅関連施策

創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ)は 2024年8月20日に第93回スマカチ・シンポジオ「経済産業省が考える 脱炭素社会の実現に向けたこれからの住宅関連施策」を開催した。

脱炭素社会の実現に向けて、省エネや資源循環といったキーワードは住宅関連施策でも重要な課題になっている。こうしたなか、経済産業省ではZEHの推進や省エネリフォームの推進を通じて、脱炭素社会の実現に貢献するための住宅関連施策を打ち出している。

そこで、経済産業省製造産業局生活製品課の潮崎雄治 住宅産業室長を講師に迎え、2024年度の施策展開を踏まえながら、これからの住宅関連政策の方向性について話してもらった。

経済産業省製造産業局 生活製品課住宅産業室の潮崎雄治室長

今後10年間でくらし関連部門で
約14兆円の投資を呼び込み約2憶トンのCO2削減

2023年7月に閣議決定した脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(GX推進戦略)では、くらし関連部門について、今後10年間で国内のCO2排出削減量を約2憶トン削減し、約14兆円もの官民投資を呼び込む方針が盛り込まれた。

この方針を受けて、経済産業省や環境省、国土交通省では―
①太陽光等の再エネ蓄電池も活用したZEH・ZEBの普及拡大
②断熱窓への改修や高効率給湯器の導入等による家庭部門における省エネ・脱炭素化の加速と供給メーカーの国際競争力強化
③新たな国民運動「デコ活」の推進による、住宅のZEH・省CO2化や、省エネ・省CO2性能の高い製品などの需要喚起
④木材やグリーンスチール等の製品が評価される仕組みの検討
―などを推進する方針を明らかにしている。

このうち太陽光発電等の再エネの導入促進について潮崎室長は「比較的地域共生を図りやすく、自家消費型で導入されることで系統負荷の低い屋根設置太陽光のポテンシャルをさらに積極的に活用していくことが重要」と説明した。

住宅分野では、住宅トップランナー制度を活用した太陽光発電設備の設置に関する目標を設定する方向で検討が進んでいる。

フィジカルインターネットの実現へ
建材・住宅分野ではアクションプランを改定

経済産業省と国土交通省では、フィジカルインターネットの実現に向けて、フィジカルインターネット実現会議を開催しており、2022年3月には「フィジカルインターネット・ロードマップ」を策定し、公表している。フィジカルインターネットとは、デジタル情報の代わりに「もの」をトラックや航空機などの輸送手段によって各地の物流センターへ効率的に輸送しようという考え方。物流問題が深刻化するなかで、様々な取り組みが進展しつつある。

フィジカルインターネット実現会議の建材・住宅WGでは、2024年4月に「建材・住宅設備サプライチェーンにおける物流効率化に向けた2030年までのアクションプラン」を改訂している。また、運送事業者に過度な負担がかかる原因になっている納品条件の見直しや透明化を進め、物流の負担軽減と適正化を図るために、サプライチェーンガイドラインを新たに策定している。住宅業界においても、物流問題の解決が喫緊の課題になっているだけに、今後、こうした検討も見逃せない動きになりそうだ。