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成功するアンバサダーマーケティング 生涯顧客化戦略を探る

創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ)は、2025年2月17日に第98回スマカチ・シンポジオ「成功するアンバサダーマーケティング」を開催した。今回は、東京工科大学メディア学部准教授である藤崎実氏を講師に迎え、他業界の事例などを踏まえながら、住宅業界におけるアンバサダーマーケティング活用の可能性を聞いた。

リアルなクチコミが強力な宣伝効果に
「ファン」と共創の成功例

人口減少や情報収集手段の多様化により、新規顧客を獲得する難易度はますます高まっている。藤崎氏は、「新規顧客獲得コストは既存顧客の維持に5倍かかるという『1:5の法則』がある」と指摘し、既存顧客を重視するマーケティング戦略への転換を促した 。

「クチコミマーケティング」はこうした戦略の代表例。SNSが定着した現代においては、ネット上のクチコミが購買行動に大きな影響を与える。そのため、企業発信の広告よりも実際に商品を購入した人々(ファン)のリアルな声の方が強い説得力を持つ。そこで、企業からファンに対して有益な情報を提供し、彼らが自発的に語る言葉を増やすことで、自然とクチコミによる宣伝効果が生まれるのだ。

これをさらに発展させたものが「アンバサダーマーケティング」だ。ファンの中でも熱量の高い人々をアンバサダーと定義し、彼らと中長期的な関係を築いて商品やブランド価値をより広く発信していく。

ここで注意すべきは、「インフルエンサーマーケティング」との違いである。インフルエンサーは多くのフォロワーを持ち、影響力が大きいが、そこには金銭的な契約が発生する。要は仕事の一環として商品の宣伝をしているに過ぎない。一方、アンバサダーの最大の特徴は、「この素晴らしい商品を他の人にも伝えたい」という純粋な熱意(やりがい)を持っていること。ここに商品への信頼が生まれ、一般の生活者としてのリアルな声が周囲に強い説得力をもたらす。そのため、藤崎氏は「アンバサダーへは金銭的な報酬を支払ってはいけない。アンバサダーが信頼されるのは無報酬だからこそであり、お金を渡せば信頼が壊れる」と強く警鐘を鳴らす 。

食品メーカーのカゴメの事例をみると、わずか2.5%のコアファンが売上の約3割を支えており、売上に大きく貢献している。また、ワークマンやケロッグのように、アンバサダーと共に新商品や新しいレシピを共創し、その熱量ある発信によって大きな成果を上げている企業も多い。

住宅業界での「ファン」活用の可能性

藤崎氏は、住宅業界におけるアンバサダーマーケティングの活用可能性も示した。近年では、多くの住宅関連企業がユーザーを招いた木工教室や技術者による講習会などのイベントを実施している。藤崎氏はこうした場を「宝の山」と表現し、「そこに必ず『ファン』がいるはず。そのファンの人たちを1回きりで帰してしまうのではなく、アンバサダーとしてずっと繋ぎ止めておくことが重要」と話す。

住宅購入は一生に一度レベルの大きな買い物であり、検討時には情報収集や相談を欠かさない消費者が多い。だからこそ、自社のファンとなったユーザーと長く良好な関係を保ち、リアルで熱意あるクチコミを波及させていく仕組みづくりが、これからの事業成長の大きな鍵を握る。

SNS時代のクチコミの重要度を語る藤崎氏