創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ)は、2025年6月16日に第101回スマカチ・シンポジオ「人口動態から視えてくる課題と可能性」を開催した。今回は、人口学を専門に研究している明治大学政治経済学部の金子隆一教授を講師に招き、人口減少によって直面する課題と住生活への影響などを聞いた。
少子化即解消でも人口減少止まらず
「都市介護難民」急増
日本の人口動態は現在、明治期以降の「上り坂」の時代から反転し、「下り坂」の時代へと突入している。しかも、少子高齢化によって人口構造はかつての様相から劇的に変化し、高齢化率が3割を超えている。
多くの人々は「少子化を解消すれば人口減少は止まる」と考えがちだが、事態はそう単純ではない。国立社会保障・人口問題研究所のデータによれば、仮に2015年の時点で少子化が止まり出生率を2.1程度に回復・維持できていたとしても、総人口は2080年頃まで減少し続けるという。長期間にわたる少子化の影響でこれから親となる世代の人口がすでに縮小しているため、その子どもの数にも限界があるからだ。完全に人口減少が止まるまでには、少子化の解消からかなりのタイムラグが生じることになる。
加えて、高齢者人口の割合が高い現在の歪な人口構造では出生数を死亡数が大きく上回る「多死社会」となっており、今後も人口減少は一層加速することが予測される。
こうした人口変動が住生活にもたらす影響は、地域によって異なる。地方では若年層の流出により人口維持がさらに困難となる一方、大都市圏では高齢者の実数が爆発的に増加し、医療・介護の需給逼迫や「都市介護難民」の発生リスクが高まるとみられる。2010年と2040年を比較すると、東京都や神奈川県では50%以上も高齢者人口が増える見込みだ。
また、世帯構造の変化も顕著であり、生涯未婚率の上昇や長寿命化により、単身高齢者世帯が急増する。これにより、従来の家族が支えるモデルは維持困難となり、見守り機能やバリアフリーを備えた「高齢仕様住宅」へのニーズが一層拡大する。

人口の「量」を「質」でカバー
技術革新で世界のモデルに
日本全体を対象とした革新的な政策などが出てこない限り、ここまで進行してしまった少子高齢の人口構造を変えることは難しい。こうした中で金子教授が重要視するのが、「人口の『量』の減少を『質』の向上で補う」という視点だ。高齢者の体力は過去30年間で約10歳若返っており、健康寿命の伸長や高学歴化といった「質」の向上を活かせば、労働力不足の影響をある程度緩和できるとする。これを支えるのが技術革新であり、住環境においてはスマートホーム技術などが単身高齢者の安全確保や生活支援を自動化する可能性を秘める。労働面では、AIやロボットとの協働が高い生産性を維持することにつながる。
金子教授は、「日本は世界に先駆けて超高齢化を迎える実験国家であるが、この難局を技術革新と社会システムの刷新によって乗り越えることができれば、その取り組みが世界モデルとなり得る。悲観するのはまだ早い」などと述べた。
