住まいや住生活にかかわる幅広い業種の企業が集まり、関連行政機関や団体、学識経験者、メディアなどの協力を得て、さまざまな視点から研究活動に取り組んでいます。

なぜ、一条工務店は2×4工法の工業化に取り組んだのか

創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ)は、2025年9月10日に第103回スマカチ・シンポジオ「なぜ、一条工務店は2×4工法の工業化に取り組んだのか」を開催した。今回は、一条工務店グループのHRDで代表取締役社長を務め、現在は(一社)日本モバイル建築協会の技術アドバイザーである萩原浩氏に一条工務店の工業化戦略などを聞いた。

CAD活用で徹底的な工業化
大量生産・パネル工法に注力

一条工務店が本格的な工業化生産に踏み出したのは1997年のこと。同年に工業化の基盤となる住宅ユニット製造工場をフィリピンに建設した。フィリピン工場には2万4000人が就業しており、そのうち4000人がCAD関連の業務に就いている。CADで現場施工の全ての要素をデータ化し、大量生産と高付加価値パネル戦略を徹底した。キッチンや窓サッシ、電気配線などあらゆるものを可能な限り工場でパネルに組み込むことで、現場作業を極限まで削減。加えて、パネル化することで輸送回数を減らし、日本への輸送コストも最低限に抑えた。

住宅づくりに際しては、性能にもこだわってきた。ドイツに倣って高断熱住宅づくりにチャレンジし、在来工法をベースとした断熱パネルに行きついた。

また、全館床暖房にも挑戦。ここでもCADを使い、ダクト配管の設計を効率化した。全館床暖房は、今では同社の陰の主力商品となっている。

その後、一条工務店は全館床暖房のランニングコスト削減を図るため、在来工法からツーバイフォー枠組み工法への転換を実施。パッシブハウス並みの断熱性能を備えたモデルハウスを北海道に建築した。このモデルハウスには190ミリの断熱材を入れており、現在ではこの仕様を反映した「アイ・キューブ」という商品を展開している。

オフサイト建築を全国に
オールジャパンで取り組み拡大

萩原氏は、自身が技術アドバイザーを務める(一社)日本モバイル建築協会の取り組みも紹介した。

巨大地震の発生時、各ハウスメーカーには(一社)プレハブ建築協会を通じて仮設住宅の生産要請が来る。しかし、南海トラフ地震レベルになると、既存の生産手法だけでは十分な数を供給することが難しい。

一方、日本には3万5000社以上の工務店があり、こうした企業が1社1棟体制で仮設住宅をオフサイト建築すれば、十分な棟数を確保することができる。まさにオールジャパンの取り組みであり、これが分散化という考え方だ。そして、「これを実現するための仕組みが、ユニット化や工業化であり、一条工務店の取り組みはそのミニチュア版のようなもの」と萩原氏は話す。

また、同協会では仮設住宅の恒久利用も目指している。「一度作った建物は恒久的に使えた方が社会インフラとしてもプラスになる」(萩原氏)という考え方から、協会で提供するユニットは少なくともZEHレベル、できれば断熱等性能等級6にしていくという動きを実践している。「国費を使って大々的に仮設住宅を作るのなら、それをいかに有効活用していくかが重要」と萩原氏は結んだ。

CADを駆使した工業化の重要性を話す萩原氏