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国土交通省の住宅生産行政からこれからの住宅業界を考える

創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ)は、2026年2月17日に第107回スマカチ・シンポジオ「国土交通省の住宅生産行政からこれからの住宅業界を考える」を開催した。今回は、国土交通省住宅局・住宅生産課の前田亮課長を講師に迎え、近年の住宅生産行政に関する主な施策や課題、今後の方向性などについて話を聞いた。

住宅・建築行政の最新動向
省エネ、レジリエンスなど重点に

住宅業界では、建物の省エネ化を促す施策が続々と打ち出されている。今回のセミナーでも前田課長は、国土交通省が現在導入を進めている省エネ関連の施策を説明した。そのひとつとして構想するのが、現行の住宅トップランナー制度を拡充した「上位トップランナー制度(仮称)」だ。住宅トップランナー制度とは、大手住宅事業者を対象に、市場で流通するよりも高い省エネ性能の住宅を供給する目標を課すもの。

国交省が新たに構想する「上位トップランナー制度」では、合せて市場全体の約4分の1を供給する超大手事業者を対象に設定。より性能の高い住宅を供給するための中長期的な目標の策定を事業者自身に求め、その実現を目指してもらう。その項目としては、断熱等性能等級6、7や太陽光発電、HEMS、蓄電池を設置した住宅などの供給割合を想定する。そして、既存のトップランナー制度と同様に、目標への取り組み状況やその達成状況を毎年度報告することを法律で義務付けたい考えだ。

また、高度な省エネ技術の開発・実装化を促すため、特殊な構造・設備を用いたZEH・ZEB水準の建物を評価・認定できる仕組みづくりにも取り組む。現在、省エネ基準の適合確認には大臣認定ルートがあるが、これをZEH・ZEB水準にも適用し、新たな大臣認定ルートの確立を進めている。

激甚化する自然災害への対応として、「レジリエンス」も極めて重要なテーマに据える。令和8年度の予算案では、新規事業として「2050先導型住宅推進事業」に着手する予定だ。これは、長期優良住宅と同等の性能を満たしたうえで、蓄電池や燃料電池の設置といったレジリエンス対策を講じた住宅に対し、1戸当たり50万円を補助するもの。前田課長は、「災害が起きても居住継続ができるような住宅を支援する。それによって、居住者の避難所での生活負担が減り、避難所自体の負担も軽減される」と事業新設の趣旨を話す。なお、同事業をみらいエコ住宅2026事業と併用することも可能にする方針だ。

担い手確保が喫緊の課題

こうしたの施策を具現化していく担い手の不足が、今の住宅業界の喫緊の課題だ。大工就業者数は2020年時点でわずか30万人であり、過去20年で半減した。また、60歳以上の比率が建設業全体に比べ高く、高齢化も深刻だ。前田課長は、「他の建設業に比べても大工の就業環境は非常に厳しい状況にある」と強い危機感を示す。この状況を打破するため、国交省は有識者や業界団体を交えた新たな委員会を設置。担い手確保に特化した「中長期ビジョン」を2027年度中に公表する予定としている。

国交省が示した住宅業界の将来を見据える新たな構想が、これからの市場にどのような影響をもたらすのか、今後の動向が注目される。

今後の住宅行政方針を語る前田課長