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健康主軸の住まいづくりは広がるか 住宅版WELL認証の実態に迫る

創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ総研)は、2026年3月24日に第108回スマカチ・シンポジオ「住宅版WELL認証『WELL for Residential』とは?」を開催した。今回は、国内でWELL for Residentialのコンサルティング業を展開するヴォンエルフの児島秀樹氏を講師に迎え、制度の概要や日本での普及の可能性などを聞いた。

「健康」が住宅選びの指標に

近年、ライフスタイルの変化などにより、ウェルビーイングな住まいづくりの重要性が高まっている。こうした中、建物を健康の視点から評価する国際指標であるWELL認証の運営団体IWBIが、2023年5月に住宅用の新たな認証制度「WELL for Residential」をリリースした。これは、通常のWELL認証を使いやすく調整した、第三者による世界初の住宅向け健康認証プログラム。児島氏は、「これからの高齢化社会では健康長寿がポイントになるため、住宅の健康性能がより求められてくるのではないか」と話し、WELL for Residentialの普及に期待を寄せる。

10のコンセプトで評価
従来のWELL認証から要件を緩和

WELL for Residentialの評価基盤となる考え方は、基本的に通常のWELL認証と共通している。「空気」「水」「光」「温熱快適性」「材料」「音」「食物」「運動」「こころ」「コミュニティ」の計10コンセプトがあり、付随する100以上の項目を設定。例えば「光」では、日中に自然光を取り入れ、夜間はしっかり遮光することで良質な睡眠を確保できる設計が求められる。これらのコンセプト・項目を複合的に評価し、最大211ポイント中40ポイント以上を獲得することで、WELL for Residential認証の取得に至る。

認証物件の所有者は、国際的な第三者評価の基準に基づいて住宅の健康価値を対外的に可視化できるようになるため、自社のPRやブランド価値向上などにつなげることが可能だ。さらに、ZEHなど高性能な住宅がスタンダードになる中、健康にフォーカスした評価は、新たな差別化要素にもなり得る。

一方、Residentialが通常のWELL認証と大きく異なるのが、導入・運用のハードルを大幅に緩和した点だ。通常のWELL認証では、10コンセプトごとにクリアしなければならない必須項目を設けている。加えて、認証取得後も建物がその性能を維持しているかを確認するため、3年ごとの再審査と認証期間中の維持報告が必要だ。これに対し、Residentialではこれらの要件が一切不要。導入・運用のしやすさが特長となっている。

また、従来のWELL認証では取得した点数に応じてゴールド(60点)、プラチナ(80点)といった認証ランクを設けていたが、Residentialではこれがない。こうした変更点により、プロジェクトの特性やオーナーの意向に合わせてクリアすべき評価項目を重点的に選択することができ、通常のWELL認証よりも自由度が格段に向上している。

審査に掛かる費用は、集合住宅で1㎡あたり約140円。戸建(1〜8軒)では全体で約130万円が目安だ。「分譲住宅地などまとまった規模のプロジェクトであれば一棟当たりのコストを下げられるため、戸建でも導入を十分に検討する余地がある」(児島氏)。省エネ性能に次ぐ新たな潮流として、健康性能を客観的に証明できるWELL for Residentialの導入が、今後は広がっていくかもしれない。

WELL for Residentialについて説明する児島氏