住まいや住生活にかかわる幅広い業種の企業が集まり、関連行政機関や団体、学識経験者、メディアなどの協力を得て、さまざまな視点から研究活動に取り組んでいます。

快眠環境で健康を維持する

適切な睡眠が健康と密接に結びついていることは言うまでもありません。睡眠不足などは、精神衛生上好ましくないだけでなく、様々な病気のリスクを高めます。

日本の社会人の平均睡眠時間は5~6時間で、米国の7~8時間に比べると非常に短いのが現実です。最も死亡率が低くなるといわれる睡眠時間は7時間で、これより短いと、虚血性心疾患死亡などの死亡リスクが高まると言われています。

睡眠時間が短すぎても長すぎても動脈硬化など生活習慣病のリスクにつながるということもわかっています。
また、うつ病になった人の4割が、発症前に不眠を訴えていたというデータや、
交代勤務者のように睡眠が不規則な人の乳癌発症リスクが平均よりも高いというデータもあります。

逆に言えば、良好な睡眠が健康につながると言えるでしょう。
そのために重要なのが住環境です。
質のいい睡眠をとるには、室内が暗く静かであることが条件―つまり、寝室の明るさと音対策がポイントになります。

夜に真昼の太陽光に近い光を浴びると脳は覚醒し、眠気が訪れにくくなります。
白色で明るい蛍光灯を使うことが多い日本の住宅に対して、欧米では暖色系の弱い光の照明器具を使い、寝室は明るすぎません。暖色系の弱い光は眠気を誘い、居住者を睡眠に誘導するのです。

間接照明や調光調色が可能なLED照明などを使うことで、良好な睡眠環境をつくることができます。また、外の騒音が大き過ぎるようであるならば、寝室の防音対策などが必要でしょう。明るさと音に加えて、室内の温度や湿度も、質のいい睡眠をとる上でポイントになります。

体温、とくに身体の奥の深部体温が低下することで人は眠くなります。逆に体温が高まると眠りにくくなります。例えば、寝る前に熱いお風呂に入ると体温が上がるため、目が冴えて眠れなくなってしまうのです。

しかし、逆に室内温度が低すぎても、体温を保とうとする制御が強まり、体表からの放熱が減少して、寝つきは悪くなります。夏の熱帯夜が寝苦しいのは、体温が高まり寝つきが悪くなるためです。

適切な睡眠をとるには、寝室を適切な温度・湿度にコントロールすることが重要になるのです。そのためには、住まいの断熱性・気密性を高めたり、必要であれば冷暖房機を使用したりすることが大切になります。

住宅における睡眠環境は、健康を維持することに密接しています。
寝室の光、音、温度、湿度をコントロールすることが、質のいい睡眠につながり、ひいては健康な暮らしにつながるのです。