厚生労働省の調査班の調べによると、病的なインターネット依存が疑われる中高生は全国で93万人にものぼるそうです。
スマートフォンなどを使ったオンラインゲームやSNSの普及の影響だと考えられ、学校を欠席したり睡眠障害につながる恐れもあるそうです。
世界保健機関がゲーム障がいを精神疾患として認定するなど、IT社会がもたらす負の側面がクローズアップされています。
今後、デジタル空間に“孤室”を設ける子どもも増えるのではないでしょうか。かつて「子ども部屋論争」というものがありました。子ども部屋が子どもの健全な成長や家族とのつながりを妨げているのではないか―。そういった議論が行われた時期があったのです。
この議論を経て、現在では必ずリビングを通らないと子ども部屋に行けないといった間取りの工夫を施す住まいも増えています。
それでは、子ども達がデジタル空間に“孤室”を作り始めたとき、住宅はどういった対応ができるのでしょうか。ある意味では、物理的な子ども部屋よりも難しい問題を抱えています。
子ども達のデジタル空間の振舞いを感じ取ることが求められるわけですから。
例えば、リビング以外でもネットができない環境を作ったり、スマートフォンを子ども部屋に持ち込むことを禁止するといった対策が考えられますが、恐らく子ども達はそうした大人たちが築いたセーフティネットの隙間を通り抜けていくでしょう。
積水ハウスでは、大空間リビング「ファミリースイート」を提案しています。より広いリビング空間で、家族の気配を感じながらゆるやかにつながる生活シーンを演出しようとしています。
現実世界では家族が同じ空間に居ながら気配を感じながら、子ども達はデジタル空間で外の世界ともつながっている。そういった生活シーンを実現することができれば、デジタル空間が“孤室”になることはないのかもしれません。
心地よさをリビング空間に創造することで、家族が同じ空間に集う環境を創り出す。結局は、そういう住まいを提案することが、デジタル社会の負の側面から子ども達を護るセーフティネットになるのかもしれない。