住まいや住生活にかかわる幅広い業種の企業が集まり、関連行政機関や団体、学識経験者、メディアなどの協力を得て、さまざまな視点から研究活動に取り組んでいます。

社会的なセーフティネットとしての住まい

高度経済成長期から成熟期へと日本経済が突入するなかで、住まいの福祉的な役割がより大きくなっています。

国は、新たな住宅セーフティネット制度を創設し、これまでのような公共住宅を活用したセーフティネットだけでなく、民間の住宅を活用して、高齢者や低額所得者、子育て世帯といった住宅確保要配慮者のための住まいを確保していこうとしています。

また、支援を必要としている人たちをソフト面からもバックアップするために、居住支援法人の設立を促そうとしています。そして、2019年6月には(一社)全国居住支援法人協議会(以下、全居協)が設立されました。この全居協では、全国の居住支援法人などの連携を促そうとしています。

「ハウジングファースト」という考え方があります。アメリカが起源とされており、ホームレスの方々を支援するためには、まずは住まいを確保することが大事であるというものです。この考え方は、ホームレスだけでなく、例えば所得水準が低く生活を安定させることができない若年層、シングルマザー、そして高齢者などにも当てはまるでしょう。

厚生労働省で様々な福祉施策を担当し、全居協の会長に就任した村木厚子さん(津田塾大学客員教授)は、「厚生労働省に在籍している時に福祉施策に取り組んでいて、住まいという居場所があることの重要性を痛感させられました。高齢者でも、障がい者でも、児童でも、ホームレスでも、居場所を作って、そこに福祉を必要としている人を連れてきて、暮らしを成り立たせるというのが共通の課題なのです」と語っています。

社会的なセーフティネットを構築するうえで、住まいの確保は最優先事項です。居場所を作り、生活を安定させ、必要な支援の手を差し出しつつ、自立を促していく。単身高齢世帯が増加するなかで、セーフティネットとしての住まいの役割がますます大きくなりそうです。

「厚生労働省に在籍している時に福祉施策に取り組んでいて、住まいという居場所があることの重要性を痛感させられました」と語る村木厚子さん。