内閣府がまとめた「令和2年高齢社会白書」では、高齢者の住まいと暮らしの実態を垣間見ることができます。そのなかで、高齢者が犯罪被害となる割合が右肩上がりに上昇していることが明らかになりました。高齢期を見据えた防犯対策の重要性が浮き彫りになっています。
全世帯の半分は高齢者世帯
まず日本の高齢化の実態を見てみます。白書によると、高齢者人口は、昨年10月現在で3589万人となり、いわゆる高齢化率は28.4%。1994年の14%から倍増しています。高齢化率は、2036年で33.3%となり、2042年以降に高齢者人口が減少しても高齢化率は上昇し、2065年には38.4%に達すると見込まれています。
高齢者のいる世帯は、2018年現在で2492万7000世帯となり、全世帯(5099万1000世帯)の48・9%、約半数は高齢者のいる世帯。世帯構造別でみると、1980年では「三世代世帯」が最も多かったのですが、2018年では「夫婦のみ世帯」が約3割を占め、最も多く、さらに高齢者の単独世帯をみると、6830万人で全世帯の27.4%で、年々増加傾向にあります。
さらに詳しくみると、高齢者の1人暮らし者が高齢者人口に占める割合は、2015年は男性13.3%、女性21.1%。将来推計値では2040年に男性は20.8%、女性24.5%へ。高齢者の4〜5人に1人は1人暮らしとなる見通しです。
高齢者の犯罪被害15.3%、消費生活相談は約31万件
防犯の面から高齢者の実態をみると、事件に巻き込まれる割合も高く、全体の刑法犯被害認知件数は減少傾向にあるのに対して、高齢者の被害割合は、2018年は15.3%となり、増加傾向にあります。被害総額は2019年で301億円にものぼっています。
罪状別にみると、特殊詐欺の被害者の実に約8割が高齢者となっています。このうちオレオレ詐欺に限ってみると被害者の97.4%が高齢者であり、とくに80歳前後の女性の被害が多発していることが明らかになっています。
さらに、全国の消費生活センターに寄せられた相談のうち、契約者が高齢者である件数をみると、2019年は実に31万件と前年の35万件から減少したものの、依然多いこともわかりました。
相談内容を販売手法・手口別に詳しくみると、「かたり商法」が約3万件・22.4%、次いで「インターネット通販」が約2.9万件・21.8%となっています。
ここでいうかたり商法とは、「まるで役所から来たような、まぎらわしい言い方と服装で、消火器、ガス警報器、表札などを売りつけるもの」(警視庁HPより)。
巧妙化する詐欺手口に巻き込まれる高齢者は、今後、高齢者夫婦のみや単世帯の高齢世帯が増えてくるに伴い増えていくことが予想されるだけに、さらなる防犯対策が求められます。また最近の強盗犯罪の手口も複数人による手荒な手口が目立つようになっており、身体能力が低い高齢者がターゲットとされればひとたまりもありません。シニア期の防犯対策はこれまでと違った新たな工夫や対応の必要性に迫られているといえます。