住まいや住生活にかかわる幅広い業種の企業が集まり、関連行政機関や団体、学識経験者、メディアなどの協力を得て、さまざまな視点から研究活動に取り組んでいます。

建設業を変える 日本初、国産建設用3Dプリンターの実力

創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ)は、2025年11月13日に第105回スマカチ・シンポジオ「建設業を変える 日本初、国産建設用3Dプリンターの実力」を開催した。今回は、国内で初めて国産建設用3Dプリンターの量産に踏み切ったPolyuseの代表取締役を務める大岡航氏を講師に招き、国内建築における3Dプリンターの活用状況などを聞いた。

採用広がる建設用3Dプリンター
人手不足など課題解決に貢献

建設業界は、慢性的な人材不足・高齢化という深刻な課題に直面している。また、日本全体では高度成長期以降に整備されたインフラ設備の老朽化が進み、インフラ崩壊が懸念されている。こうした中、安全性も確保しつつ建設現場の省人化・生産性向上を図ることができる解決策として期待されているのが、建設用3Dプリンターだ。
建設用3Dプリンターは、3次元のデジタルデータをコードに変換し、それを加工機が読み込んで立体的に構造物を作り出す技術。ロボットアーム型、ガントリー型、門型、クレーン型など様々なタイプが存在する。

Polyuseでは「Polyuse One」という自社製建設用3Dプリンターを販売している。運搬時や日本の密集した建設環境での使用、天候による品質リスクなどを考慮し、幅約4mの比較的小型なガントリー型モデルに仕上げた。公共事業を中心に国内の建設工事にこれまで約200 件活用され、国内シェアは9割を占める。

特に土木分野で先行して活用されており、公共工事では全国の整備局などで採用が進む。京都府では、野田川流域における世界最大規模の擁壁工事に採用された。この工事は京都府から発注されたものであり、273m にわたる擁壁をPolyuse Oneで構築した。従来、こうした工事は現場打ちやプレキャスト製品で対応していたが、Polyuse Oneを活用することで200m 以上にわたる足場を組むことなく、安全に施工することができた。さらに、足場設置に掛かる約1500 万円のコスト削減にもつながった。

建築分野においては、構造部分への利用はまだ難しいものの、非構造部分や自由度の高いデザインが求められる部分への活用が進んでいる。とりわけホテルやレストランなど商業施設での採用が多い。また、災害対応での活用も期待できる。能登半島地震では、鉄筋をコンクリート内部に組み入れたRC造で被災地の仮設住宅を構築した。

全国どこでも3Dプリンター建築を

今後、2025年度中に「Polus One」を全国に100 台ほど設置し、北海道から沖縄まで、どこでも土木・建築工事ができる環境の構築を目指す。26 年度以降はニーズや施工効果も考慮しながら、設置方針を柔軟に検討していく。
大岡氏は「3D プリンターはあくまで建設工事の選択肢の一つに過ぎない。普及に向けては、品質や安全性管理を厳しく行う必要がある。ただ、これをクリアできれば省人化・省力化、工期短縮、建築コスト削減など建設業が抱える課題を一挙に解決できる可能性を秘めている。需要拡大に向け、今後も議論を深めていきたい」などと話した。

建設用3Dプリンターの現在地を語る大岡氏