創樹社が主宰する住まい価値総合研究所(スマカチ)は、2026年1月26日に第106回スマカチ・シンポジオ「国内外の事例から見るサーキュラー建築の可能性」を開催した。今回は、(公財)自然エネルギー財団の岡田早代上級研究員を講師に迎え、国内外のサーキュラー建築の動向や取り組み事例、日本における普及の課題などを聞いた。
万博、先進諸国で事例多数
岡田氏はまず、サーキュラーエコノミーについて説明した。サーキュラーエコノミーとは、資源を採掘し、利用して廃棄するという従来の直線型経済から脱却し、製品や材料をメンテナンス・再利用して循環させ続ける経済システムのこと。建築分野においては、建材を長く使うこと、取り外して再利用できるように設計することなどが該当し、これらを実現した建物が「サーキュラー建築」という位置付けだ。

近年の万博博覧会では環境・サステナビリティが主要テーマとなっており、会期が短期間である点など踏まえてサーキュラー建築の取り組みが進められてきた。日本では2025年の大阪・関西万博で先駆的な事例が登場している。その一つが「ウーマンズ パビリオン」だ。最大の特徴は、2020年ドバイ万博の日本館で使用されたファサード部材の98%を再利用したこと。それでいて、ドバイ万博の日本館とは全く異なる構造・意匠に再構成している。施工を担当した大林組の分析によると、新築と比較してCO₂排出量を469t削減できたという。さらに、部材管理にQRコードとBIMを使うことで、解体作業の効率化や部材の将来的な再利用をしやすい仕組みとしている。
海外の動向に目を向けると、米国などでは「デコンストラクション」と呼ばれる部材の再利用を前提とした解体手法が推進されている。中でもオレゴン州ポートランドやカリフォルニア州パロアルトなど一部の都市では、一定条件の建物解体においてデコンストラクションが義務化されており、解体業者向けの認定制度や補助金制度の整備が進む。
また、サーキュラー建築の先進地である欧州では様々なプロジェクトが展開されている。代表的なものがオランダ・ブルメンにおける市庁舎の増改築プロジェクトだ。建材の将来的な再利用を前提とするため、リサイクルが難しいコンクリートの使用を避け、木材を使ったプレハブ構造のモジュール式で設計した。これにより、建材の約90%を解体・再利用することが可能となっている。
リユース材の保管場所の確保と情報管理の徹底が課題に
こうした事例から導き出されるサーキュラー建築実現の鍵は、「解体しやすいデザイン」と「情報のデジタル化」にある。欧州では建築材料の素材や強度などの情報をデジタルプラットフォーム上で管理し、建物を「資材の銀行(Material Bank)」として捉える考え方も定着しつつある。
日本においてサーキュラー建築を広げる第一歩として、岡田氏は「接着剤の使用を避け、ボルトや継ぎ手を用いた『外しやすい構造』の採用や、デジタルツールによる情報管理の徹底が重要になる」と話す。また、「リユース材の保管場所の確保や、再利用材の品質評価など、物理的・制度的なインフラ整備も必要」と述べた。大阪・関西万博での知見を基に、資源循環型社会に向けた建設業界の構造変革が期待される。
