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急成長する“シェアリングサービス”市場 住宅業界における可能性とは

7月20日、住まい価値総合研究所は第26回シンポジオ「急成長する“シェアリングサービス”市場‐住宅業界における可能性とは-」を開催した。

シェアリングエコノミーとは、車や住宅、労働力、スキルなどの資産をソーシャルメディアなどのインターネットを活用しながらシェアする経済の仕組み。現在、多くの企業がサービス提供を行っており、その市場が急拡大している。
スマカチ総研では、(一社)シェアリングエコノミー協会の渉外部長で、内閣官房のシェアリングエコノミー伝道師も務める石山アンジュ氏を講師に迎え、シェアリングエコノミーの現状、今後の展望などについて、豊富な具体事例を交えながら解説いただいた。

シェアリングエコノミーには明確な定義はないと言うが、大まかには場所や乗り物、人、スキル、お金をインターネット上のプラットフォームを介して個人間で賃借や売買、提供する新しい経済の動きをいう。ゲストとホストの間でサービスを仲介するプラットフォーマーが手数料を取る。通常のビジネスが資産を所有しているのに対し、シェアリングエコノミーのプラットフォーマーは一切の資産を持たず、取引主体に立たないのが特徴だ。

形態としては、Airbnb(民泊)やUber(配車)などのCtoC、スペースマーケット(企業の施設や会議室)といったBtoBのシェアリングがある。また、前述がn:nのサービスであるのに対し、Laxus(高級バッグ)やair Closet(洋服)といった1:nのシェアリングもある。

石山氏によると、わが国のシェアリングエコノミーの市場はホームシェアが12.3兆円、ライドシェアで3.8兆円以上の経済効果が見込まれ、「効率的に遊休資産をマッチングするシェアリングエコノミーは、短期間で大きな経済効果を生み出す可能性がある」と指摘している。

石山氏は、シェアリングエコノミーが社会に与える影響として①1億総活躍社会の実現、②地方創生・共助の社会の実現、③サステナブルな社会の実現、④新たなイノベーションの創出、という4点をあげた。CtoCのビジネスはシニアや子育てママの社会参加など多様な選択肢を創出する。また、公助ではなく個人間で助け合う共助の地域創生を可能にし、遊休資産・資源の有効活用は過剰生産・過剰消費に代わるゆるやかな消費文化の創出につながる。さらに新たな体験や付加価値の創造にもつながる。

一方、国もシェアリングエコノミーに着目、2016年11月には「シェアリングエコノミー推進プログラム」を発表、2017年1月には内閣官房シェアリングエコノミー推進室を設置、6月に発表した「未来投資戦略2017」では2017年度中に少なくとも30地域でシェアリングシティを推進し、自治体におけるシェアリングエコノミー活用の実現を打ち出した。

幅広い分野でシェアリングエコノミーのサービスが提供され、さらに国も注力し始めている。特に生活に密着するCtoCのサービスは住生活産業ともかかわりが深いものが多く、「こうしたサービスが、どんどん広がっていく」とみられるなか、住宅産業界においても“シェア”というキーワードが重要さを増してきそうだ。

参加者からは「これほど多様なサービスが提供されているとは知らなかった。今後のビジネスとして非常に可能性を感じた」、「まずはシェアリングできるサービスをあぶり出し、新しいサービスにつなげていきたい」、「住宅における所有、貸す、などの概念が変わる気がする。今後の企画に活かしたい」といった声が聞かれ、ビジネスに直結するヒントが得られたシンポジオとなった。