京都大学総長の山極寿一さんと爆笑問題の太田光さんの対談を収録した「『言葉』が暴走する時代の処世術」(集英社新書)。この本のあとがきで山極さんは、「デジタル社会で仲間を作るのは簡単だが、信頼関係を作るには身体を合わせる時間と場所が必要」と指摘しています。
ICTの発達によって、時間や空間を飛び越えて簡単にコミュニケーションをとることが可能になりました。それによって多くの恩恵を受けています。その一方で、デジタル空間の中でのコミュニケーションが、“生の言葉”を使ったものとは全くの別物であるということも認識しておくべきでしょう。
山極さんの言葉を読んだ時、小沢健二さんの「天使たちのシーン」という曲を思い出した。この曲に「いつか誰もが花を愛し歌を歌い 返事じゃない言葉を喋りだすのなら」という一節があります。
ここで歌われる“返事じゃない言葉”とは、山極さんの指摘する“生の言葉”と同義語のような気がします。
Hmlet Japanは、東京都渋谷区でCo-Living事業の第一号物件「Hmlet@渋谷松濤」を開業しました。同社は、2019年10月に三菱地所とシンガポールに本社を置くHmletの合弁会社として誕生した会社で、日本でのCo-Living事業の推進が主な事業。
Co-Livingとは、入居者のコミュニティ形成に重点を置いたシェアハウスの一形態で、20代~30代のミレニアム世代を中心に世界中の都市で人気を集めています。
「Hmlet@渋谷松濤」では、物件内に居住者間の交流を促すための共有空間を創設するだけでなく、コミュニティ・マネージャーを配置します。このコミュニティ・マネージャーを中心として、コミュニティ形成をサポートしていくというわけです。
日本でもミレニアム世代を中心として、Co-Livingだけでなく、サブスク型の賃貸住宅、ソーシャルアパートメントといった新しい住まい方が支持を集めはじめています。その多くは、現実社会でのコミュニケーションを付加価値となっているのです。
もしかしたら、デジタルネイティブであるミレニアム世代こそが、“返事じゃない言葉”や“生の言葉”を用いたコミュニケーションを求めているのかもしれません。だからこそ、「身体を合わせる(=現実社会でのコミュニケーションを図れる)時間と場所」が提供されるCo-Livingなどを住まいとして選択しているのではないでしょうか。
Co-Livingという器の中で、“返事じゃない言葉”や“生の言葉”が次々と創造され、旧来型のコミュニティとは異なる新しいつながりが生まれていく―。
天使たちのシーンでは、「愛すべき生まれて育っていくサークル 君や僕をつないでる穏やかな止まらない法則」という一節も出てきます。
Co-Livingは、どのような愛すべきつながりをもたらしてくれるのでしょう。