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住まいに潜む事故リスクを防げ!! 『木造住宅の劣化対策のガイドライン』を徹底解説!

住まい価値総合研究所は、第30回シンポジオ「住まいに潜む事故リスクを防げ!!〈木造住宅の劣化対策のガイドライン〉を徹底解説!」を2月19日に開催した。

昨年8 月、国土技術政策総合研究所が「木造住宅の劣化対策のガイドライン」を公表した。5年間の産学官による共同研究による成果で、外装材や柱・梁などの躯体の劣化を防止するため、雨水浸入、結露にともなう劣化のリスク要因と、外皮の仕様の選択方法や施工方法について示している。

シンポジオでは、石川廣三・東海大学名誉教授と、土屋喬雄・東洋大学名誉教授の両氏が、木造住宅の瑕疵の現状を踏まえ、劣化対策の重点ポイントをガイドラインに沿って解説した。

石川廣三・東海大学名誉教授

まず、石川氏が登壇し、「〈木造住宅の劣化対策ガイドライン〉策定の経緯と全体の概要」を解説した。

木造住宅が真壁構造から大壁構造、そして最近の形式へと変化するなかで、耐久性に関するリスクが高まっている。最近の住宅では、軒の出が小さく浸水リスクが高いこと、剛床構造や気流止めの設置により床下・壁内・天井内空間が独立し、外皮内水分の滞留が起きやすいこと、高断熱により内外温度差が増大し、外皮内気積が小さく放湿が困難なことから結露リスクが増大することなどを指摘した。

「ガイドライン」の全体構成を説明し、「ガイドラインの公表が終わりではなく、成果を住宅の設計施工の実務に活かしていくことが重要」と結んだ。

土屋喬雄・東洋大学名誉教授

次に土屋氏が「最近の結露事情」をテーマに講演。夏型結露による被害が増えているとし、結露対策は冬型が中心で夏型は顧みられなかったこと、夏型は要因が多岐にわたり対策が難しいことなどを指摘した。夏型結露による具体的な被害事例を示し、そのメカニズムを解説した。

また、沖縄で木造住宅の劣化トラブルが増えていることを踏まえ、その壁と床下の湿害について解説。例えば、間仕切り壁内の結露について、暖められた小屋裏から間仕切り壁内へ、そして冷房で冷やされた居室から第三種換気扇で室外へという空気の流れのなかで間仕切り壁内で結露が発生していることを示し、「安易に内地型のものを持ち込むべきではない」と警鐘を鳴らした。

そのほか、化粧スレート屋根の留め付け釘頭の結露による雨水浸透などについても解説した。
次に、石川氏が再度登壇、「雨水浸入による木造住宅の劣化 要注意ポイントと対策」をテーマに講演を行った。

まず、外皮内の雨水浸入とその移動経路について解説。雨水浸入が起きやすい部位として2 階バルコニー取付け部や屋根と壁の取り合い部、開口部たて枠周辺部など「部位の面内でなく部位と部位の取り合い部」とし「湿潤箇所と浸入箇所は必ずしも近いところではない」と指摘。雨漏りを防ぐ方法としては防水と雨仕舞があるが、“木造住宅の“躯体の挙動が大きい”、“外皮の構成が複雑”、“水分に弱い”という特性から「防水への過度の依存を避け、雨仕舞に重点を置いた対策を」と話した。

そして、極力、雨水を隙間に近づけない工夫、隙間があっても雨を漏らさない工夫、事故的浸水への対応として木部の乾燥に有効な換気・通気措置の重要性を指摘し、それぞれ具体的な工夫を示した。

石川氏、土屋氏の具体的、実務的な講演に、参加者からは「理解しやすく、ポイントが絞り込まれ良く分かった」、「基本的なリスクを改めて認識した」、「今の住宅が抱える問題点が明確に分かった」、「どれだけ徹底して対策するかが大切だと感じた」など、木造住宅の劣化リスクについて、あらためて認識が深まったシンポジオとなった。