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あらためて考えるCLTの可能建築を面白くするCLTの使い方

住まい価値総合研究所では、3月26日にスマカチ・シンポジオ「あらためて考えるCLTの可能性 建築を面白くするCLTの使い方」を開催した。多くのCLTを用いた建築の設計を手掛けてきた福山弘構造デザイン代表の福山弘氏を講師に迎えて、実例を交えながらCLTの建築材料としての可能性を紹介してもらった。

数多くのCLT を活用した建築の設計を手掛けている福山氏

単に広く厚い板として捉えるとCLTの可能性はさらに広がる

福山氏は、「CLT構法というものが、最初に存在するわけではない。CLTというものは要するにただの板。単に広く厚い板として捉えれば、様々な可能性があるはず」と指摘する。

福山氏が携わった福岡県の戸建て住宅付きの診療所では、CLTパネルを合掌組みにし、構造材としてだけなく、断熱材、仕上げ材を兼ねた面トラストして活用している。合掌組の独立したユニットとして成立するように設計を行い、そのユニットを平面的にずらして設置することで、デザイン的な面白さも演出している。

また、静岡県の専用住宅では、傾斜地に建つ住宅のプラットフォームとしてCLTを活用している。傾斜地に改めて鉄骨を組んでコンクリートスラブを打設するには、施工手間、コストがかさむといった制約があった。

そこで既存の基礎を型枠利用したRC基礎や新設の鉄製の支柱を活かして、その上にCLTパネルを2層重ねて、建物を支えるプラットフォームを構築している。

同じく静岡県の大本静岡分苑では、地域産の桧の柱の間にCLTのパネルを落とし込んでいく構法を採用している。日本の伝統的な建築構法である板倉構法とCLTを融合した構法になっており、接合部のほぼ見えない特徴的な外観を実現している。また、高い構造性能を発揮するだけでなく、施工性にも優れているという。

国産材活用、地域再生といった観点から注目度が急激に高まったCLT。法整備なども進み、CLTを活用した建築事例も増えてきているが、まだまだ建築材料としてのポテンシャルを秘めていると言っていいだろう。

しかし、その一方では「CLTの活用ありき」で考えられるケースも多く、結果としてCLTだから実現できた建築空間やデザインなどを強く感じられるものになっていないこともある。それだけに、CLTの建築材料としての可能性を再考する必要がありそうだ。

CLT をテーマに開催された第41 回のスマカチ・シンポジオ