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スノーピークが考えるアーバンアウトドア戦略

創樹社が主宰する住まい価値総合研究所は、2019年8月30日、第44回スマカチシンポジオ「スノーピークが考えるアーバンアウトドア戦略~住宅関連企業とのコラボで実現する新しい住まいの価値とは~」を開催した。

アウトドア用品などの分野において国内外で高い人気を誇るスノーピーク。現在、アーバンアウトドア事業を推進しており、その一環として工務店などの住関連企業を特約店として登録し、「野遊びできる家」の提案を推進している。この「野遊びできる家」は、住宅のハード部分の提案というよりは、アウトドア用品を活用しながら、自然を感じながら日々を過ごすための生活提案。アーバンアウトドアをテーマに、新しい住まいと暮らしの価値を創造しようとしている。

また、新潟県新潟市の戸建分譲住宅プロジェクト「つながる街『天野エルカール』」(全10戸)では、住宅棟と共有地の監修を担当。街区内に設けて共有スペースを通じて、地域内のコミュニティを醸成する提案なども行っている。

今回のスマカチシンポジオでは、スノーピークにおいてアーバンアウトドア事業を担当している吉野真紀夫氏を講師に迎え、アーバンアウトドア事業の概要や今後の予定などを紹介してもらった。

スノーピークのTokyo HQ3(東京都渋谷区)で 開催された第44回スマカチシンポ

こだわりのモノづくりとユーザーとの
コミュニケーションでブランド力を向上

スノーピークのアウトドア商品は、キャンプ愛好家の間では高い評価を得ており、確固としたブランド力を確立している。そのブランド力の背景には、同社のモノづくりへのこだわりやユーザーとのかかわり方に秘密がある。

モノづくりという点では、あらゆる製品がシステムデザインされており、全てのキャンプ用品をスノーピークブランドで揃えることで、新たな価値を生み出すように配慮している。また、同社の商品には保証書がない。製造上の欠陥が原因の場合は、無料で修理または交換している。それは、メーカーが自社の製品の品質に責任を持つのは当然であると考えているからであり、新潟の本社には全国から送られてきたスノーピーク製品を修理するための工房もあるという。

ユーザーとのかかわり方としては、約40万人の会員組織を運営しており、累計で300万円以上の商品を購入したユーザーを対象としたサファイア会員も存在している。同社のアウトドア用品を累計で300万円も購入するユーザーがいるということは、顧客のファン化を実現している証拠ではないだろうか。

さらに、年間100回以上のイベントを開催し、ユーザーとの触れ合う機会を創出している。吉野氏は、「広告宣伝のコストをかけるのであれば、イベントを開催し、お客さまとフェイス・トゥ・フェイスで触れ合った方がブランド価値はより高くなるのではないか」と語る。

こだわりのモノづくりと、ユーザーとの濃密なコミュニケーションによって確立されたスノーピークのブランド力。新しい価値を提案し続けながら、顧客をファン化していこうという姿勢は、住宅業界にとっても大いに参考になるはずだ。