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どうなる住宅市場 都道府県別にみる住宅市場の行方

住まい価値総合研究所は、4月24日に「どうなる住宅市場 都道府県別にみる住宅市場の行方」と題して第42回シンポジオを開催した。ニッセイ基礎研究所 金融研究部不動産投資チームの吉田資氏を講師に迎え、都道府県別の住宅市場がどのように動き、どのような取り組みが必要になるのかなどについて語ってもらった。

 どうなる住宅市場 都道府県別にみる住宅市場の行方
第43回スマカチシンポジオの様子
 どうなる住宅市場 都道府県別にみる住宅市場の行方
講師のニッセイ基礎研究所 金融研究部 不動産投資チームの吉田資氏

日本では近年、人口の減少が大きな問題となっている。国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の地域別将来推計人口(市区町村別)」によると、北海道や東北、近畿、九州・沖縄などのすべてのエリアで、2030年には2015年の人口を下回ると予測されている。中でも最も減少率が大きいのは東北エリアで、2015年と比べて2030年には20%も減少するという。人口減少に加え高齢化も進んでおり、高齢化率は2015年の27%から2035年には33%にまで上昇する見通しだ。

人口減少や高齢化が加速する中で、現在、問題となっているのが空き家の増加である。2013年時点で空き家は全国で800万戸を超え、大きな社会問題となっている。空き家が増加する要因の一つとして吉田氏は「新築・持家重視の政策が長期間にわたり進められてきた影響で、住宅の購入イコール新築住宅という図式が定着し、中古住宅市場が成熟しなかったのではないか」と語る。

2015年に「空き家対策の推進に関する特別措置法(空家法)」が施行となったものの、建物全体が空き家ではない「共同住宅等」は空家法の対象に含まれていないことから、「共同住宅等の空き家に関する対策が今後重要になってくる」と話す。

さらに、人口減少や高齢化に伴い日本における新設住宅着工床面積が減少傾向をたどっている。国土交通省の「住宅着工統計」によると、2018年の新設住宅着工床面積は約7500万㎡で、最高水準であった1996年の約15800万㎡に比べて半分程度に減少。首都圏の分譲マンションの平均価格が上昇していることも影響し、平均床面積の縮小が進んでいる。 2035年の全国新設住宅着工床面積は、現在の7割程度の水準まで減少し、特に青森・秋田・福島・山梨では、半分以下の水準にまで落ち込む可能性がある。人口減少・高齢化に伴い新築住宅市場の縮小が予測される中で、今後、住宅や住まいの在り方は大きく変化していくことになりそうだ。