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“CS向上”はもう古い!? NPS活用で収益に結び付く“顧客視点経営”を

8月31 日、住まい価値総合研究所は第27 回シンポジオ「“CS 向上はもう古い!?” NPS 活用で収益に結び付く“顧客視点経営”を」を開催した。

顧客視点経営が大きな注目を集めるなか、顧客の声を起点とした経営課題の解決やサービスの質の向上を行うサービスを展開するエモーションテックの今西良光代表取締役を招き、顧客体験価値の向上を行うCXM、およびCXMを進めるために開発されたNPS について解説いただいた。

 “CS向上”はもう古い!? NPS活用で収益に結び付く“顧客視点経営”を

CX =カスタマー・エクスペリエンスとは、顧客が企業の商品・サービスから得る体験価値のことで、「企業が提供するすべての体験から形成される、顧客の自社への感情」を指す。このCX を管理し、体験価値向上を行うことがCXM =カスタマー・エクスペリエンス・マネジメントであり、顧客に対して提供する体験を改善し、ロイヤリティを創出することで企業の継続的な成長や短期収益向上を行う。CS は企業成長や収益向上ではなく満足度の向上を目的としていること、また、CRM(Customer RelationshipManagement)が企業成長や収益向上を目的としているものの顧客勘定やロイヤリティに重きを置いていないという点で、これらとは異なる。つまり、CXM はCS とCRMの両面を同時に捉えるという考え方である。

日本ではまだ馴染みが薄いが、情報が購買に与える影響の拡大、購買パターンの多様化、市場成長の鈍化や低減などを背景に「ここ3 ~ 4 年で国内においてもCXM、NPSを採り入れる動きが、KDDI や楽天など特に大企業において広がっている」という。

この企業成長を図るため、顧客満足度よりも有効な指標として開発されたのが「NPS」であり、現在ではフォーチュン500 の3 分の1 以上の企業が活用しているという。 NPS = Net Prompter Score とは、自社顧客全体に占める正味の推奨者の割合。つまりサービスなどについて「満足しているか」ではなく「友人や知人にすすめたいと思うか」で測る。算出方法は非常にシンプルで、お客さまに「親しい友人や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか」を0 ~ 10 点で選択してもらい、0 ~ 6 点を批判者、7 ~ 8点を中立者、9 ~ 10 点を推奨者に分類、その割合を算出する。そして推奨者の割合から批判者の割合を差し引いた数字がNPS となる。

企業のある商品について「満足度」と「リピート購入意欲」、「NPS」という3 つの指標は、いずれも商品の売り上げ成長率と関係があるが、関係性が最も強いのは「NPS」であるという。一方、10 の業界の企業を対象とした調査では、満足度については「大満足」と回答しているにもかかわらず「推奨しない」と回答している人は56%に達している。

今西氏によると「NPS が高い企業ほど、成長率が高いことが分かっている」という。今西氏はある企業の組織ごとのNPS と受注率の関係、また、施設を運営する企業のNPS と施設稼働率のグラフでその関係を示した。 ただし、「NPS は点数指標に過ぎず、その奥にある原因を考えていくことが重要」と指摘する。つまり、どうすればNPS が改善されるのかを明確にし、その改善活動を行ってはじめて目的である継続的成長や短期収益向上につながることになる。

参加者のアンケートでは「NPS の実運用についてここまで聞けたのは初めてで非常に参考となった」、「推奨度がどのような影響を与えるのか良く分かった」との回答の一方で、「実際の事業にどう役立てるかの具体性が考えられなかった」、「馴染みのない単語が多く難しかった」との意見も見受けられた。