全面自由化で電力サービス付き賃貸も登場か
大手電力会社以外で電力の小売りを行う「特定規模電気事業者(PPS)」、いわゆる〝新電力〟の登録が急増しています。
既存のエネルギー関連事業者だけでなく、ガス、通信、IT、流通関係など異業種からの新規参入も増えており、2015年3月11日現在で、596の事業者が新電力の事業者登録を行っています。
こうした新規参入の活発化は、2014年6月に、国が2016年4月からの電力全面自由化を決めたことが大きく影響しています。
これまで新電力が供給できるのは契約電力が50kW以上の高圧・超高圧である場合に限られ、50kW未満の戸建て住宅やコンビニなどの小規模建築については自由化されていませんでした。
しかし、改正電気事業法が成立し、戸建てを含む50kW未満の低圧電力と言われる部分についても、新電力事業者が小売りを行えるようになったのです。
住宅業界でも新電力市場への参入が相次ぐ
新電力事業を行っていく上で、本業で既存の顧客基盤を持つ企業は営業面で有利といえます。
電力を販売する顧客基盤を持っていれば、市場参入当初から一定の〝売り先〟を確保できます。
その意味では、膨大なOB顧客や自社ストックを抱える住宅会社は、新電力事業者としての素養を備えていると言えるかもしれません。
事実、ここにきて新電力市場に参入する住宅事業者が相次いでいます。
特に注目されるのが賃貸住宅の管理会社です。自社で管理する賃貸住宅の居住者に対して、電力を供給することができれば、新しいビジネスチャンスを具体化することができます。
賃貸住宅の多くは、分譲住宅で導入されている高圧一括受電サービスを導入することが難しい。住戸数などが少ないため、電力の仕入れ量が50kWに満たない場合が多いからです。
しかし、電力の完全自由化により問題が解消され、自社で管理する賃貸住宅の入居者に電力を供給することが可能になります。
こうしたビジネスチャンスの芽を捉え、新電力事業者として名乗りを上げる賃貸住宅関連の事業者が増えています。
例えば、2014年5月にレオパレス21は子会社の発電事業者レオパレス・パワーを通じて、新電力事業者「レオパレス・エナジー」を設立。同年8月には、大和ハウス工業グループの大和リビングマネジメントが新電力「大和リビングユーティリティーズ」を設立しました。さらに同年9月には、大東建託グループが新電力会社「大東エナジー」を設立しています。
近い将来、“電気代”が賃貸住宅を選ぶポイントの一つとなる日がくるかもしれません。