木造建築の可能性を広げる新構造材としてCLT(直交集成板)が注目を集めています。
CLTとは、挽板を繊維方向が直交するように積層接着した大型面材のこと。
挽板を直交集積することで「反る」「割れる」といった木材の欠点を解消し、さらに鉄筋コンクリートに匹敵する強度を誇ります。さらに、厚みや幅があるため、断熱性、耐火性、遮音性にも優れています。
ヨーロッパで生まれたこのCLTを構造材として用いることで、より効率的に木造の中大規模建築を建てることが可能になります。
2016年度早期の実用化へ
新建材として注目を集めるCLTですが、現状では、日本でCLTを用いて建築物を建てるには、建物ごとに特殊な構造計算を行った上で、国土交通大臣認定を取得する必要があります。
こうしたなか国土交通省と林野庁は合同で、2014年11月に「CLTの普及に向けたロードマップ」を公表しました。
CLTに関する施策の内容やスケジュール、目標などを具体的に示すことで、関係者の取り組みを促進していく考えです。
具体的には2016年度早期を目処に、CLTの強度基準や、一般的な設計基準を策定し、これらの基準に基づき告示を制定する予定です。
これにより建築基準法上でCLTの位置づけが明確化され、構造用の建築材料として利用できるようになります。
また、CLTの防火対策も進めています。
「燃えしろ設計」でどれだけの耐火性能があるのかを明らかにし、2015年度を目途に、1時間の準耐火構造の告示制定を目指しています。
これにより3階以下の建物にCLTを「現し」で用いることが可能になります。
そのほか、CLTの生産体制の整備、中大規模木造の設計に取り組む建築技術者の育成なども進めています。
現在、国内では3社がCLT製造工場を有し、その生産能力は年間1万立方㍍ほど。
ロードマップでは、CLTが実用化される2016年度までに年間5万立方㍍程度のCLT生産能力を実現することを目標に掲げています。
その後も毎年、5万立方㍍ほどの生産体制を順次整備し、10年後の2024年度までに年間50万立方㍍まで引き上げる考えです。
これは中層建築物(3~4階建て)の約6%がCLTを用いた建築物に置き換わった場合の量に相当します。
また、生産性の向上を図ることで、現状では1立方㍍当たり15万円程度であるCLTの製品価格を7~8万円程度にまで抑制します。
これによりRC造などと価格面で対抗できるようになります。
2020年には、東京オリンピック開催も控えています。
近年のオリンピックでは、地球温暖化の防止という観点から、関連施設を木材で建てるケースが増えています。
東京オリンピックでも、CLTをはじめ、木材を大量に活用した中大規模建築物の特需が生まれる可能性があります。