戸建て住宅は平屋か2階建て…そんな時代はとうに過ぎ、都市部などでは3階建て住宅が珍しくはありません。しかし、今、4階建てや5階建て、さらには7階建てといった戸建て住宅が登場しています。
こうした多層階住宅が注目される背景の一つに、相続税の改正があります。
今年1月の相続税改正で基礎控除額が引き下げられ、課税対象者は従来の4%から6%程度にまで増えると言われています。
とくに地価の高い都市部に土地や持家を所有している人に相続税が発生する可能性が高まりました。そのため、課税対象額の減額が見込める賃貸や店舗・事務所併用住宅で資産活用を検討しようという人が増えているのです。
そうしたなか、都市部を中心にハウスメーカーによる3階建て以上の多層階住宅の提案が活発化しています。
例えば、パナホームは今年4月に重量鉄骨ラーメン構造の都市型住宅「Vieuno PRO(ビューノ・プロ)」を発売しました。3~7階建てに対応し、都市部の限られた敷地を有効活用できる多層階住宅です。構造体のバリエーションを増やすことで、店舗や事務所用途に最適な柱や柱の少ない大空間を実現できます。
大和ハウス工業も10月から3・4・5階建て重量鉄骨住宅「skye(スカイエ)」を発売する予定です。
2013年に発売した「スカイエ」をリニューアルしたもので、従来の住宅用重量鉄骨ラーメン構法を見直し、
柱や大梁に複数のサイズを用意することで、多様なプランに対応できるようにしました。都市部の厳しい敷地条件に対応し、二世帯住宅や賃貸併用、店舗併用といった多様な用途に対応します。
これら以外にも3階建て以上の多層階住宅の提案に力を入れるハウスメーカーが増えています。
これまで多層階住宅は鉄筋コンクリート(RC)造で建てられることが多かったのですが、東日本大震災後の復興工事の増加や東京オリンピックに向けた工事の増加に伴い、最近は労務費や資材価格の高騰からRC造の価格が上昇しています。
一方、ハウスメーカーが手掛ける工業化住宅は建設コストが安定しており、多くの部分を工場で製造するので品質も高く、着工から完工までの工期も短くて済みます。ハウスメーカー各社はそうした工業化住宅の強みを活かし、多層階住宅市場に進出しています。
相続税が強化されるなか、今後、ハウスメーカーの多層階住宅の提案がさらに増えそうです。もしかすると、都市部の住宅地の景色が大きく変わるかもしれません。